Our Medical Strength 2 – 日帰り喉頭「超」微細手術

声のパフォーマンスを障害している声帯の微小病変に対しては、全身麻酔下の顕微鏡手術(喉頭微細手術)が必要となります。一般的には入院となることが多い手術ですが、当院では、年齢と身体条件に問題がなければ、「東京日帰り手術クリニック」において、身体的・時間的・経済的な負担を軽減した日帰り手術を実施しています。院長は長年、声帯微小病変の手術法について研究・改良を重ねてきました。「東京日帰り手術クリニック」では、院長が整えた設備類を用い、自ら執刀いたします。

声のパフォーマーの中でも歌手の診療では、一般の患者では問題にならないような、非常に細かい声の訴えに対応することが求められますが、それは手術においても同様です。一般の患者では適応にならないような微細な声帯粘膜隆起病変が、歌唱においては表現を阻害する要因になることがあり、それらの病変は時に0.2㎜未満の厚みしかないこともあるのです。
当院には、様々な医療機関でそのような微小隆起病変を手術適応とされず、彷徨った末にたどり着く歌手も多くいらっしゃいます。もちろん、微細な病変の切除には過剰切除等のリスクが伴うのは確かですが、声帯粘膜に異物が存在すれば粘膜波動および音声に影響を与えるのは物理的に必定であり、粘膜波動を完全に保ちうる安全な病変除去が可能ならば、原状復帰させる方が良いのは自明だと考えられます。院長は、喉頭微細手術において、いかに小さな声帯隆起病変を手術適応とし、安全確実に除去できるかに長年こだわってきました。その前提として、切除対象となる病変が声の症状の原因であると診断できていることは言うまでもありません。

現在、声帯の手術手技において、世界的な標準として広く採用されているのがマイクロフラップ法という技術です。この手法は、単純な切除とは一線を画し、声帯の層を慎重に剥離することに重点を置いています。特に、声の質に直接影響を与える粘膜振動に極めて重要な役割を果たす粘膜固有層浅層(SLP)を確実に温存できる利点があると専門家の間で認識されています。
しかし、微小な病変を扱う場合には、マイクロフラップ法による剥離にこだわりすぎると、必要以上の組織除去を引き起こすリスクが高まってしまいます。当院ではこれを克服するため、マイクロフラップ手術用に特別に開発された繊細な手術器具を、日本の伝統工具である鉋(かんな)のような使い方で応用し、病変部位を切除するというよりもむしろ、極めて薄く精密に剥ぎ取っていく手法を採用しています。これが喉頭「超」微細手術です。
このアプローチにより、これまでは手術での切除が困難とされていた極めて薄い病変、たとえば声帯縁の上方や下方に限局している病変に対しても、安全かつ効果的な手術が可能となりました。さらに、より大きな病変に対しても、この技術を連続的に適用することで、野菜の皮を剥くピーラーのように、声帯本来の自然な曲面を損なうことなく病変を除去することが可能になりました。当院ではこの独自の手術手技を「ピーリングテクニック」と名付けています。

駒澤大吾:喉頭“超”微細手術にこだわる. JOHNS 40(6):673-675, 2024

声帯は非常に代謝の低い特殊な臓器です。基本的には頑丈でハードな使用に耐える構造を持っている反面、一度損傷が生じてしまうと、他の組織と比べて著しく回復が遅いという特徴があります。身体の他の部位であれば、適切な休養と時間経過によって自然な回復や治癒が期待できるものですが、声帯の場合には、そのような自然回復のメカニズムが十分に機能しないことが明らかになっています。

多くの方が加齢や単なる経年変化によるものだと思い込んでいる声の不調も、実は声帯の微細な病変が原因であることが少なくありません。そのため、長年にわたる声の悩みの根本的な原因が声帯の病変にあると正確に診断できた場合には、適切な手術的介入がその問題を解消する最も効果的な手段になり得ると考えています。

しかしながら、手術には必ず一定のリスクが伴うことも事実です。そのため、私たちは手術を治療の最終手段として位置づけており、慎重な判断のもとで実施しています。術前のカウンセリングでは、予想される手術の効果や想定されるリスク、術後の回復過程について、患者様が完全に理解し納得していただけるまで、丁寧に時間をかけて説明いたします。

詳細は日帰り手術パンフレットをご覧ください。ただ、日帰り全身麻酔での手術が可能なのは、小学生~65歳未満の健康な患者様です。それ以外の方については、他病院に入院しての手術をご提案いたします。

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