Performing Voice Medicine Essentials

このページでは、当院の考える、声の表現者のための医学の内容を分かりやすく解説します。現在6つの項目の解説をしています。

  • 声をコントロールする3要素と声帯所見の見方
  • 上咽頭の重要性
  • 内喉頭筋と機能的音声不安定状態について
  • ボイストレーニングとは何か
  • 声のコンディショニングについて
  • 声に影響するその他疾患

insight 01 – 声をコントロールする3要素と声帯所見の見方

  • 声をコントロールする3要素
  • 声帯所見の見かた
  • 声帯のレベル限局性病変

声を成立させている要素は、呼気・声帯・共鳴腔の3つに分けて考えることが通例です。
呼気は言うまでもなく声のエネルギー源です。
声帯は呼気および声帯自体の粘弾性によって振動し、喉頭原音という声のもととなる音を生成します。ここには、基準となる音のほかに、声帯の厚みによって変化する倍音が含まれています。喉頭原音は声というよりは機械的な振動音に近いものだといわれています。弦楽器に例えるなら、ボディに響く前の弦だけの音のようなものです。
共鳴腔は声帯のすぐ上の部分から音の出口となる口や鼻に至る空間で、ここで原音に含まれる倍音を増幅・減衰し、「響き」の特徴を音に付け加え、「音」を「声」にします。「響き」には文字通り「ひびき」として感じ取れる要素と、「ことば」の種類として聞き分けられる要素があります。大雑把に言って、口腔内では「ことば」の要素を付加し、鼻の奥や咽喉(のど)の部分では「ひびき」を加えていると考えるとよいと思います。

パフォーマーの声の医学という観点からみると、これらのうち声の不調の原因として最も多く病的な状態になるのは「声帯」と、共鳴腔の中の「上咽頭」です。ほかの部分に病気がないわけではありませんが、頻度としてはこの二つが圧倒的です。

ここでは、まず「声帯」について、声のパフォーマーの方に知っておいていただきたい知識をお伝えします。読んでいただくと、診察室でご自分の声帯所見を見る際にも役立つと思います。

声帯の障害は主に2つに分類されます。1つは声帯表面の粘膜に異常が生じる「器質的障害」、もう1つは声帯内部の筋肉の働きに異常が生じる「機能的障害」です。機能的障害については、別項で詳述しますので、ここでは器質的障害に関係する内容、すなわち声帯の形状を観察する際に大切なことを説明します。

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声の医学ガイド 01 – 声をコントロールする3要素と声帯所見の見方

insight 02 – 上咽頭の重要性

近年は「上咽頭炎」というワードがクローズアップされ、一部の医療機関では音声障害の原因の一つとしてとらえられ、EAT(上咽頭擦過療法、かつてはBスポットと言われていました)が行われています。当院での治療方針は、「当院の強み」の項で説明した通りですが、ここでは、声のパフォーマンスにおける上咽頭の重要性について解説します。
音声障害一般について、上咽頭の重要度の評価はまだ定まっているとは言えませんが、パフォーマンス音声に限るなら、臨床的な重要度は声帯に勝るとも劣らないと当院では考えています。とくに、声の響きやコンディショニングの問題を医学的に対処することは、上咽頭をターゲットにして初めてなしうると言えます。ただ、ここで述べることは、当院で数多くの患者さんの治療にあたった経験から明らかになりつつあることであり、その科学的な理屈付けがきちんとなされているわけではないことをお断りしておきます。

声のパフォーマンスにおける上咽頭の重要性は、主に3つの面から考えられます。

  • 共鳴腔としての重要性
  • コンディショニング面での重要性
  • 自律神経調整の問題

以下、順に説明しようと思います。

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声の医学ガイド02 – 上咽頭の重要性
声の医学ガイド02 – 上咽頭の重要性

insight 03 – 内喉頭筋と機能的音声不安定状態について

「当院の強み」の項目でもお伝えしたように、声の不調の中には、声帯そのものには異常がなく、発声時に声帯を閉じる筋肉がうまく働かなくなるために生じるタイプのものがあります。この場合、声の「かすれ」でなはく、裏返り・つまり・抜け・ガラつき、が生じます。また、ふるえ・ゆれ、ピッチの不安定さの中にもこのタイプのものがあります。もともと全く問題なく出せていた音域で声のコントロールが効かなくなり、意図しない音声症状が生じるものと考えていただければよいと思います。日常会話では症状が出現せず、歌唱などパフォーマンス発声時だけに症状が出現するため、ここではまず、この状態を、パフォーマンス音声の「機能的不安定状態」と呼んでおこうと思いますが、症状が進むと日常の話声にも支障が出てくる場合があります。

頻度は器質的障害に比べて多くはありませんが、声のパフォーマーにとって最大の問題といえるこの状態は、現場ではその存在は知られてはいるものの、医学的には未解明な部分が多く、都市伝説的な解釈が巷にあふれています。ここでは、現在までに分かってきたことについて可能な限り詳しくわかりやすく説明しようと思います。

  • 「機能的音声不安定状態」という名称について
  • 声帯調節の基礎知識
  • 症状の種類と原因筋
  • 内喉頭筋を調節する神経回路
  • 発症の原因と要因
  • メンタルや情動、自律神経、上咽頭炎とのかかわり
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声の医学ガイド03 – 内喉頭筋と機能的音声不安定状態について
声の医学ガイド03 – 内喉頭筋と機能的音声不安定状態について

insight 04 – ボイストレーニングとは何か

現代は、ボイストレーニングといわれるものが巷間に溢れています。診療中に、どのボイストレーニングが良いのか質問をうけることも度々です。ボイストレーニングには様々な流派のようなものがあり、各流派によって、発声時に意識するポイントや、発声スタイルを分類する枠組み、時には理想とする発声自体に違いがあります。それらにはそれぞれの考え方と根拠が示され、どれを信じていいのかわからないこともあるでしょう。
良い発声とは何かを考える際、私たちは芸術的な観点に加えて、医学的な観点も重視します。すなわち、医学的なトラブルを引き起こす可能性が低い発声を「良い発声」と位置付けています。この項では、これまでの臨床経験と医学的知見から考える、良い発声とボイストレーニングについて、医学的な観点からの考えを述べようと思います。

  • 声の3要素とボイトレ
  • ジャンル特異的な発声や声区の獲得
  • トランジョンと真のレガートの重要性
  • 「わかる」だけでなく「できる」へ
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声の医学ガイド04 – ボイストレーニングとは何か
声の医学ガイド04 – ボイストレーニングとは何か

insight 05 – 声のコンディショニングについて

声帯組織の電子顕微鏡的研究で世界をリードする佐藤公則先生によると、声帯粘膜は非常にエネルギー消費が少ないシステムで代謝が行われているそうです。このことはすなわち、酸化ストレスにさらされる度合いが少ないことを示していると考えられ、声帯が身体の他の部位に比べて炎症が起こりにくい部位である要因であると考えられます。
ただし、それを上回る負荷がかかって一旦炎症が生じた場合は、代謝の低さは回復が迅速に行われない要因にもなると考えられ、両刃の剣と言えるかもしれません。
「熱しにくく冷めにくい」声帯ですが、コンディションを保つために、私たちにできることは何でしょうか。この項では、受診以前にできるセルフケアについて、科学的知見と臨床経験に基づいた実践的な方法をご紹介します。

  • 十分な潤滑を保つこと
  • 声を使った後は「黙る」のではなく「クールダウン」
  • 声の連続使用は17分が限界の目安
  • 上咽頭のケアも忘れずに
  • 首の筋肉の状態も声に影響する
  • 体調・生活を整えること
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声の医学ガイド05 – 声のコンディショニングについて
声の医学ガイド05 – 声のコンディショニングについて

insight 06 – 声に影響するその他の疾患

声の障害の主な原因は声帯と上咽頭の疾患ですが、声の質や発声機能に影響を与える疾患は他にも多く存在します。これらの疾患の根本的な治療は当院の診療範囲を超えているため、各専門医療機関での治療が必要となります。当院では直接的な治療は行っていませんが、最適な声のコンディションを維持・改善するためには、これらの疾患についての理解が重要です。以下では、声に影響を与える可能性のある主な疾患について解説します。

  • 呼吸器疾患
  • 鼻疾患
  • 胃食道逆流症
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声の医学ガイド06 – 声に影響するその他の疾患

駒澤大吾のイメージ
声のクリニック赤坂 院長
駒澤大吾
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