Our Medical Strength 1 – 詳細な声帯の観察

ストロボスコープと大型高精細モニターを用いて、声帯の病変を細かく評価します。
声のもととなる音(原音)は声帯で生まれます。大多数の人の声帯は、もともと機械的と言えるほどスムーズで平坦な接触面を持っています。その表面に何らかの原因で小さな隆起や凹みが生じると、声のかすれや途切れ、発声タイミングの遅れ、声の持久力の低下といった症状が現れます。当院では、ストロボスコープ動画を内視鏡手術用の32インチ4Kモニターに映し出すことで、微小な声帯の病変を正確に評価します。
声の原音を生み出す声帯を適切に診察するためには、静止した状態だけでなく、発声時における声帯の形状と動きを総合的に捉えなければなりません。声帯の形状評価において重要なのは、単に声帯が腫れているとかポリープができているというような存在診断だけではありません。その病変が本来あるべき声帯振動のパターンと声門閉鎖にどの程度の影響を及ぼしているのか、その機能的な側面を詳細に評価することが不可欠です。
具体的には、病変の声帯上の正確な位置を把握し、それが異なる音域や声区においてどのように振動・閉鎖に影響しているかを綿密に分析する必要があります。これは特に声のパフォーマーの不調の原因を探る際に極めて重要です。さらに、歌唱ジャンルやスタイルによって求められる声帯の理想的な状態は異なることがあり、そのため個々の患者様の音楽的背景や声の使い方の特徴を十分に考慮した上で評価を行うことが重要です。
現代のポピュラー音楽における発声技術では、地声、裏声、そしてミックボイスなど、複数の声区を使い分けることが一般的です。これらの声区の違いは、主に喉頭筋群の協調運動によって調節される声帯縁の厚みの変化によって生み出されます。そのため、声帯の上下方向における病変の位置によって、地声のみに影響が出る場合もあれば、裏声だけ、あるいは特定の音域・声区でのみ症状が現れることもあります。興味深いことに、時には声帯上の微細な形状変化が必ずしも歌唱の障害とはならず、むしろその歌手特有の個性的な声質ー倍音性の増加やノイズ成分ーを生み出す要因となっているケースも存在します。
これらの複雑な状態を正確に判断するためには、様々な振動パターンで、声帯の内側縁の状態を上端から下端まで詳細に観察する必要があります。通常の声帯振動は毎秒100回以上という高速で行われるため、人間の目では直接観察することができません。当院でも、ストロボスコープという技術を用い、この高速な動きをスローモーション映像として可視化します。さらに、撮影した声帯の動きを大画面の4Kモニター上で患者様と共に一コマずつ確認しながら、状態の理解を深めていただきます。
内視鏡手術用の4Kモニターを音声の外来クリニックに導入するのは世界初の試みで、メーカーのホームページでも紹介されています。かつてないレベルの精細な画像で微細な病変の有無まで声帯の状態をチェックした上で、声の症状の真の原因が声帯の器質的病変であるかどうか十分に検討し、最適な治療方法を提示します。