Our Medical Strength 3 – 上咽頭の徹底的な治療

一般的な上咽頭擦過療法(EAT)にとどまらない、上咽頭の徹底的な治療を行います。
近年、様々な身体不調の原因として慢性上咽頭炎が注目を集め、その治療法として日本で考案された上咽頭擦過療法(EAT)を実施する医療機関が増加しています。声の不調の原因としても上咽頭炎の重要性が認識されてきましたが、EATのみでは症状が十分に改善されないケースもあります。当院では、治療法をEATに限定せず、徹底的な上咽頭治療を行うことで、声のパフォーマーの上咽頭を最適な状態へと導きます。
声の障害を治療する上で、上咽頭(鼻の奥にあるノドとつながる部分)は、声のパフォーマーにとって声帯と同等に重要な部位です。声の響きやパフォーマンスのコンディションを最適化するには、上咽頭の状態を改善し維持することが不可欠です。
「上咽頭」という用語は単なる部位の名称であり、実際に問題となるのは上咽頭後壁のリンパ組織(アデノイド)です。アデノイドは小児期には肥大していますが、通常は成長とともに縮小します。この縮小の程度には大きな個人差があり、成人のアデノイドは大きさも形状も極めて多様です。このような物理的な違いが声の響きに影響を与え、さらにアデノイドの大きさに関係なく、炎症が生じると様々な問題の原因となります。
一般的な治療法としては、EAT(上咽頭擦過療法)があります。これは薬剤を付けた綿棒で上咽頭をこすって炎症を抑える方法ですが、この方法だけでは完全な炎症の消退に時間がかかり、時には完治しないこともあります。その場合、膿や痂疲(かさぶた)が残存したり、痰の過剰分泌が継続したりします。また、一時的に改善しても、その状態が長期には維持されず、再燃する場合もあります。さらに、EATではアデノイドの大きさは変化しないため、声の響きの改善は限定的です。
当院でも、まず内視鏡下のEAT(E-EAT)を大画面モニターで確認しながら精密に行い、改善を図りますが、不十分な場合、特殊な器具でアデノイドを直接摘除したり、アデノイド下への薬剤注入を行うといった追加治療を行うことで、完全なアデノイドの減量を目指します。これにより、患者さん本来の上咽頭腔の形状への回復を目指すとともに、炎症の再燃を可能な限り予防できると考えています。
個人差はありますが、この処置によって以下のような症状が改善する可能性があります。
- 共鳴の問題:声の抜けが悪い、ミックスボイスが鳴りにくい、鼻は通っているのに鼻声、歌いにくい 等
- コンディショニングの問題:風邪をひきやすい、風邪が長引く、扁桃炎反復、後鼻漏、痰がらみ、咽頭違和感 等
- 主として自律神経調節に関する問題:声のコントロールが安定しない、歌うと吐き気がする、Covid-19後遺症 等